会社の貿易システム立ち上げに苦労しましたが1年半後くらいには順調に稼働して、どんなに工場が拡大しても貿易書類の作成に遅れは出なくなり、輸出・輸入・3国間貿易・4国間貿易といった貿易関係の世界中の売り上げが把握できるようになったころに、やっと落ち着いたと思っていたら、担当の専務から営業に異動しないかとの誘いが有りました。
私も、貿易部での大きな仕事を終えて後は後任に任せても良いなと考えていたので、誘いに乗ることにしました。 ところが、営業と言っても国内営業ではなく、いきなり海外駐在しての海外営業所勤務の仕事でした、そんな訳で最初にシンガポール支店に勤務しろという事になり、シンガポールに赴任することになりました。
その話が出る前に、社長が自社機を持って海外との物流を自社機で運ぶと言い出して、その自社機導入推進係も任命されていました。運輸省に担当の役員と何回か訪問して許可申請を行いました、色々ありましたが説明を何回か行って、中古機を改造したボーイング727と言うジェット旅客機の客室の60%を荷物室にした航空機の導入の許可が取れました。
その許可が下りて、初めてのテスト飛行でそのボーイング727が成田に飛んでくるのを出迎えました。テレビのニュースでも取り上げられました。 そのすぐ後に私のシンガポール赴任が決定しました。
そして何と、その赴任で乗る飛行機がそのボーイング727に決まったのでした。お前なら飛行機を導入した本人だから問題ないだろうという考えだったようです。
そんな訳で、自社機の初めての乗客となった私は成田空港からボーイング727に乗り込んだのです、スチュワーデスさんが一名の他に客は私だけなので、ソファーもついている機内では横になってビデオを見たり、本を読んでいましたが、ピキーン、ピキーンと映画で見る潜水艦の中の様な音がしはじめました。
そうしたらスチュワーデスさんはオーストラリア航空で長年のキャリアを持った方だったのですが、この音はオイル漏れだと思います、危ないですよと言ってきました。 それを聞いた私は、空でオイル漏れ? そりゃ大丈夫な訳ないなと思い、どうするんですかねと聞いたら、パイロットに聞いてきますと言ってスチュワーデスさんがパイロットに聞きに行きました。 戻ってきて話を聞いたら、このままシンガポールまでは飛べないので途中のフィリピンのマニラ空港に着陸して修理するとのことでした。
さらに油圧が下がって、前輪のハンドルが効かないので上手く着陸できるか分からないと言うのです、ビックリしましたがどうしようも有りません。いくら自社機の導入を進めた関係者とは言え、こんな故障はどうしようも有りません。
そうして着陸の瞬間がせまってきました、前輪が動かせないなんて危なくて仕方ありませんが、何とか無事に着陸できました、それでも前輪が動かないので方向転換ができずに滑走路の一番端まで行ってそこで止まったままになりました。 マニラ空港から見たら変な飛行機が降りて他の航空機の邪魔をして滑走路に止まってしまったことになります。 数十分その場に止まったままでしたが、飛行機を引っ張る車が来て前輪を固定して滑走路脇の枝道に引っ張って行かれてそこに停められました。
それから同乗していたフライトエンジニアがオイル漏れをしている箇所を探して回りました、ボーイング727には一番後ろにタラップが下りるようになっていて最後尾からも乗り降りが出来るのですが、結局はそのタラップが収納される壁の内部の配管からオイルが漏れているのが分かりました。 下の写真のタラップの上の収納部の壁の内部です。
その壁の開口部を開けると中には沢山オイルが漏れていました、フライトエンジニアが言うには、ひびの入っている部分の配管を切ってフレキシブルパイプを入れてジョイントで繋ぐだけで直るとのことでしたが、部品が届くまで待つしかないとのことで、暑いマニラ空港の滑走路脇でそれから6時間くらいドアを開けっぱなしにして暑い中で部品が届くのを待っていました。
やっと部品が届いて、フライトエンジニアが金属用のノコギリを持ってきて配管を切り始めました、30センチくらい切り取ってから、フレキシブルチューブを間に入れて、ジョイントで繋いで終わりでした。 車の修理と変わりません、エアー抜きもしていなかったみたいで、なんともあっけなかったですが、これでシンガポールまで飛べるのかなと逆に心配になりました。
やっとマニラを飛び立った時は夜中でした、そしてシンガポール空港に着陸した時は夜中の2時を回っていました。 それでもシンガポール営業所の仲間が迎えに来てくれていたので、お礼を言って、そそくさと迎えの車にのって従業員寮に向かい、到着してからすぐに与えられた部屋に入ってシャワーを浴びてバタングーと寝てしまいました。
翌日朝からシンガポール営業支店に出社してメンバーに挨拶をして、駐在員のN君からお客を引き継ぐのでお客への挨拶回りにいきました。
社有機ですが、ボーイング727の他にビーチキングという双発の12人乗りのプロぺラ機でタイとシンガポールの間の部品の輸送をしていました、従業員もその荷物の間に座って移動していました。一度はパイロットがトイレに行って自動操縦の時にレーダーに光の点が現れて向かって来ましたので慌ててパイロットに叫んだら飛んできて急降下してジャンボ機の下を通過したというきわどい思い出もあります。プロペラ機とは言え1万メートル位上空を飛ぶので国際線飛行機と高度が近かったのです。ジャンボ機後方にできる渦気流に巻き込まれたら大変なことになっていました。
その後、社有機のボーイング727はボーイング707というエンジンが4つの大きな機体に変更され、最後にはマグドナル・ダグラスDC10という大きな積載量のジェット機に変更されましたが、日本から送る部品が少なくなり現地調達が出来る様になったことから、社有機の保有は中止となっています。
その後の営業でのお話は次のブログをお楽しみにしてください。
コメント