マレーシアでの営業の思い出2

マレーシアでの営業の思い出2

ペナン支店では、マレーシア国内の色々な国から進出してきている多くの電気製品や機械製品のメーカーにモーターや金型やプラスチック部品やプレス部品、機械加工部品やスピーカーやコンピュータ用キーボード、ファンモーター、ボールベアリング等を販売していました。

そういう品物を何千個という単位で納入していましたので、中には不良品とまでは言えないですが、少しの寸法誤差がある製品等が納入されたりすることも時には有ります。そのときは、時間が有れば工場に送り返して正しいサイズの物を送りなおしてもらうのですが、お客様の製品の出荷納期が厳しい時には、サイズ違いの製品を選別して正しいサイズの製品のみを納入したり、サイズを少し手を加える事で規格内に入る様に作業をしたり(リワークと呼んでいました。)して何とか納入OKを取り付けたりして納期内で収める様にしたりする時もありました。 そういう時はそんな製品を送って来た工場の悪口を言って憂さ晴らしをしたものです。

あるとき日本のS社というラジカセやステレオ等で有名なメーカーのマレーシア工場にラジカセ用のスピーカーを納入した時ですが、スピーカーに貼り付けてあるパッキンの厚みが規定より05mmほど薄いものが付いていて、取り付けると隙間ができてガタガタ振動するという問題が発生しました。

当時はラジカセ(Radio cassette tape player)は人気商品でS社の工場では直ぐに生産して出荷しないといけない状況でしたので、台湾のスピーカー工場に送り返して正規サイズ品を新しく送らせる時間の余裕が有りませんでした。 そこで色々考えた結果、お金も殆どかからないでリワークをすることが出来る方法を考え付きました。 それはガムテープと呼ばれる粘着性が高くて厚みも丁度0.6mmくらいあるテープをハサミで小さくカットして、スピーカのフレームの裏側に貼り付けると隙間ができずにガタガタ振動もしなくなるということです。

ラジオカセットプレーヤーの中はこんな感じでスピーカーが取り付けられています。

そこで10個ほどのスピーカーにその対策を行ったものを、Mさんという技術の責任者の日本人駐在員の人に、この対策で何とか特別採用として認めてもらえないかとお願いに行きました。 Mさんは早速技術メンバーにそのスピーカーをラジカセに組み込ませて問題が無いかをチェックしてくれました。 その結果、納期も厳しいので特別採用で認めるとのお墨付きを頂けました。 Mさんとはペナンの日本人会の催しで良く一緒になり親しくして頂いていたので協力して頂けたものと大変感謝しました。 Mさんにはその後も色々助けて頂きました。

しかし問題はその作業をだれがやるかです、私は当然やりますが、ひとりではスピーカーを段ボール箱の封印テープを切って、箱から出して、ガムテープの小片を数枚貼り付けて、また段ボール箱にもどして全数もどしたらまた封印のテープを貼り付けるという一連の作業には最低でもあと一人は必要です。

納入されたスピーカーは6000個(ラジカセ3000台分)も有りました。 1つの段ボール箱に60個のスピーカーが入っていますので、段ボールで100箱を作業しないとなりません。

そこで、事務所に戻った私は女子事務員のTさんに、悪いけど明日は朝から夕方までS社の工場の倉庫でスピーカーのリワーク作業をしないといけないから協力してくれないかと、お願いしました。 どんな作業をするのですか? と聞かれたので、段ボールを開けて中のスピーカーにテープを数枚貼ってまた戻す作業で100箱やらないとならないと言ったら、えーっ100箱もですか、ネイルが傷むからやりたくないとの回答でした。 でも簡単にアルバイトは一日で雇えないのと、やってもらわないと終わらないので、必死にお願いして、やってくれたら残業代割増の他に日本料理店で夕食をごちそうするからと言ったら、日本料理は食べたこと無いので連れて行ってくれるなら協力しても良いとOKをもらえました。

そこで早速、翌日の8時半には事務所を出発してS社の工場の倉庫に向かいました。 倉庫ですから、冷房も効いてないので蒸し暑い中での作業です。 大きなテーブルを借りて、パレットに積まれた段ボール100箱を急いで開いて、スピーカを取り出してTさんに渡して、ガムテープの小片を貼り付けてもらい、全部貼ったらまた段ボール箱に戻してテープを貼るという作業を繰り返しです。 1箱に約10分の作業時間が掛かるので100箱だと1000分(17時間弱)が必要なので、丸々2日かかってやっと終わりました。 Tさんには2晩日本料理をごちそうしましたが、おかげで納期遅れも起こさずに何とか納入できたのでホッとしました。(もちろん台湾のスピーカー工場には思い切り呪いの言葉を吐きました。)

そうやって納入したスピーカーがS社のラジカセに組み込まれて、世界に出荷されたわけですが、しばらくの間はあのスピーカーはビビり音とか出ないでちゃんと良い音で鳴ってくれているかなあと心配していました。 スピーカーでパッキンの厚みのミスだったのでそういう対応で事なきを得ましたが、これがモーターやキーボード等だったら営業マンがその場で対処できる範囲では無いので大きな納期問題を起こしていたはずです、スピーカーではそんな問題だったので助かったと思っています、しかしそういう前線の営業マンは単なる御用聞きではなく色々工夫しながら売っているんですという事は皆さんにも理解頂けるものと思います。

次回は少し遡って、タイに初めてボールベアリングの工場が出来た時の駐在員寮の話等をしてみたいと思います。

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