私がまだ3歳前後の頃、住んでいたのは今の東京の白金2丁目辺りでした。近所に白金氷川神社と言う神社が有りました。 ある冬の日に勝手に一人で家を出て、歩いて氷川神社の階段を登って社のある所まで行くと、右手に池が有ってその池の水が氷っているのが見えました。
当時の東京は冬にはとても冷えて、池の水は氷りますし、今では殆ど見られない霜柱と言う細い氷の柱が土の下から伸びて表面の土を持ち上げていました。 子供たちはその霜柱を踏みつぶして遊んでいたものです。 今の東京では見られない現象ですね。
その日、氷川神社の池が氷った上で何人もの子供や大人がにわかスケーターになって木の下駄やサンダルで滑っていました。 それを見て私も滑りたいと思い、氷の上に乗って滑ると言うより木のサンダルで歩き始めました。 そして一人で池の中央の方に歩いて行った時に誰かが「危ない!」と叫びました。
その声と同時に私の体は中央の薄くなっていた氷を割って池にドボンと落ちてしまいました。何が起きたのか分からないまま水の中でバタバタしていたら、誰かに掴まれて抱き上げられて池の外に立たされました。
池の水を飲んで、冷たい池に落ちてワーワー泣いていた私に、多分大学生くらいだったお兄さんが、着替えないと風邪をひくからお家まで送って行くねと言ってくれました。そしてお家はどこなのと聞かれたので、あっちと家の方向を指さして、二人で神社の階段を下りて家まで歩いて行きました。
家に着いて、お兄さんが家の中に声を掛けると母が出てきました。 私がびっしょり濡れているのを見て、「あーっ!どうしたの?」と叫んで慌ててタオルを持ってきて拭いてくれました。 お兄さんから池の氷に乗っていたが、氷の薄い方に行って氷が割れて落ちた様ですと説明されて、「そうだったのですか、助けて頂いて有難うございましたと頭をペコペコ下げていました。
私は寒くてガタガタ震えていました。 その後、母は何かお礼をしたのか、お兄さんは「じゃあね!」と言って帰って行きました。 私はその後着ていた服を全て脱がされて、乾いた服に着替えさせられました。 その頃は瞬間点火式の給湯器や風呂釜などは無く、お風呂を沸かすのに何十分もかかったのでまずは乾いた服に着替えさせられたのです。
私の記憶はそこまでで、その後はお風呂に入ったのかどうかも覚えて居ません、また白金に住んでいた頃の記憶もその氷川神社の池の氷を破って落ちて溺れた時の記憶しか残っていませんが、その記憶だけは鮮明に覚えています。 人の記憶力はいい加減なのか良く出来ているのか不思議なものです。
先日、白金の氷川神社の前を通った時に階段を登ってみました。 右手に新しい建物が出来ていてその裏に当時の池がまだ有るのを見ましたが、そんなに大きな池ではなかったので、子供の頃の記憶は子供の目線からの記憶なんだなあと改めて納得しました。
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