消防用水の思い出

消防用水の思い出

私が子供の頃は青山の町には一軒家が多く、その為か消防用水として5m四方くらいの水を溜めた池がところどころに有りました。 私の家の近所にも300mくらい離れて2カ所ありました。 池の水は緑色をしていてきれいな水とは言えませんでしたが、火事が発生すると消防自動車がその池にホースを差し入れて、その水を吸い上げて燃えている家に吹きかけるのです。 もう役目を終えたのか消防用水はいつのまにか無くなってしまい、今ではその上にマンションが建っています。

昔はこの消防用水の池は周りを金網で囲んであって、簡単には入れない様になっていました。 春先になるとガマガエルが卵を産んで、ゼリーのチューブの様な中に沢山の黒い卵が入っているのでした。その卵が孵るとオタマジャクシが沢山池の表面近くを泳ぎ始めます。それから大きなガマガエルになると、その水の中に居るガマガエルをゴムのパチンコで小石を飛ばしてやっつけていました。(カエルさんゴメンナサイ。)

その金網を乗り越えて子供たちは一年中遊んでいました。 ある時近所の友達と金網の中で遊んでいたらドボン!と音がして、ノブユキちゃんが落ちてしまいました。 どうして落ちたのかは判りませんでしたが、泳げないノブユキちゃんは緑の水の中でバタバタしていました。 一瞬飛び込んで助けようかと思いましたが、以前油壷で友達と2人で溺れた時に抱きつかれて一緒に溺れた記憶がよみがえり、飛び込むのは止めて何か棒は無いかと周りを探したら、3m位の竹の棒が落ちていました。

その竹の棒を拾い上げて、落ちない様に片手で金網に捕まって、もう一方の手で竹の棒を持ってノブユキちゃんの方に伸ばしました、何とか届いてノブユキちゃんがその棒に捕まったので引っ張って池の縁まで寄せてから他の友達と力を合わせて引き上げました。 ノブユキちゃんはワーワー泣いていたので、仲間の一人にノブユキちゃんのお母さんを呼びに行かせました。

お母さんが来て、皆にお礼を言ってノブユキちゃんを連れて帰りましたが、家に帰って両親に話したらひどく怒られたので、それから暫くは池の周りでは遊びませんでした。

近くにもう一つの消防用水が有ったのですが、そちらでも事件が有りました。 その用水のすぐ横には大きなビワの木が立っていて、池の上まで枝を伸ばしていました。 初夏になるとビワの黄色い実が沢山生るのです。 その頃はお菓子も沢山は有りませんし、おやつ代わりに夏にはビワの実を取って食べたり、秋には柿の実を取って食べたりしていました。

ある夏の日に友達数人でその池の横のビワの実を取りに行ったのですが、一人の子が池の上にまで枝を伸ばしているその枝の先の実を取ろうと枝に掴まって先に進んで取ろうとしたら、枝がいきなりポキンと折れたのです、その子は皆の見ている前で枝ごとドボンと池に落ちました、アリャー!また助けないとと思っていたら、彼は泳ぎが上手で枝を持ったそのまま縁まで泳ぎ着いて、平気な顔をして上がってきました、そしてビワの実を独り占めしたのです。

みんな呆れて文句も言えませんでした。 昔は色々な危険も有りましたが皆無事に大きくなって今でも小学校、中学校の仲間とは仲良くしています。

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