私が小学生の頃、5年生から水泳クラブと電気クラブに入っていました。水泳クラブは夏しか活動が出来ませんでしたが、電気クラブは一年中活動が出来ました。
私はラジオが好きで、電気クラブでは最初はゲルマニウムラジオを作りました。母にハンダごてを買ってもらい、ゲルマニウムラジオの部品キットというのが子供の科学という雑誌の付録で付いていた物を初めて組み立てました。 上の写真の様に子供の科学という雑誌は現在も発行されていて、子供たちの知りたいことややりたいことを色々と特集しています。子供たちの夢を育ててくれる素晴らしい雑誌だと思います。 子供の科学
その付録についていた基盤に部品を差し込んでハンダ付けをしましたが、ハンダが溶けて基盤の銅板と部品の金属の足の部分が金属同士でくっつくのが新鮮で、楽しいのと驚きを感じながらハンダ付けをしていました。 最後にクリスタルイヤホンと言う放送番組を聞くためのイヤホンをハンダ付けして完成です。
ゲルマニウムラジオは電池も家庭用の電力も使わない、とても経済的なラジオですが、出力のパワーが小さいのでイヤホンでしか音を聞くことが出来ません。それでもアンテナ線として長い電線を家の中に張って、それにつないで電波が電流に変わって初めて受信が出来ます。 初めてイヤホンからラジオ番組の音声を聴いた時は、「わーい聴こえたー!」っと大騒ぎして喜びました。
丁度その頃はソニーがトランジスタラジオを日本で初めて販売して海外でも大人気を得ていた時代で、他の東芝や日立や松下電器等もトランジスタラジオを販売し始めていましたが、ソニーが群を抜いていました。
それでもトランジスタラジオはまだトランジスタが高い部品でもありそんなにたくさんは使えないので大体トランジスタを7個くらい使っているものが殆どでした。 7石ラジオと呼んでいましたがこの石と言う呼び方を考えたのはソニーの経営陣だそうです。 当時、トランジスタは高価で7個も使うと高くなってしまうので、まだ2石とか3石のラジオも沢山出回っていました。
以下はソニーが1955年に売り出した日本初のトランジスタラジオです。
今は、集積回路(IC)が当たり前になって1つのICの中にトランジスタが10万個以上も入っているようなトランジスタの塊りが普通に使われていますが、当時はトランジスタ 1つを大事に大事に使っていました。 それでも当時の真空管よりはるかに小型で省電力で高性能だったのです。
そんな訳で私もトランジスタラジオを作ってみたいと思い、まずは組み立てキットを買って作ってみようと思いました。 そこで当時愛読していた子供の科学という雑誌に載っていた広告を見て2石トランジスタラジオキットと言うのを買うことにしました。
当時は神田の須田町に子供の科学のビルが有り、その中におもちゃ屋の様に科学や生物や化学に関連した製作部品や道具が沢山並んでいました。 私はある日青山三丁目から都電の10番に乗り神田の須田町まで行って、場所を探しながら子供の科学の建物を見つけて入って行きました。その中で目当ての2石トランジスタラジオキットを見つけて、貯めておいたお年玉の中から千数百円するキットを買いました、当時としてはかなり高価な買い物でした。
大喜びで手にした袋を大事に家に持って帰り、さっそく組み立て説明書を読んで組み立てにかかりました。 説明書通りにプラスとマイナスを間違えない様にハンダ付けをして、さあこれで良し完成だと安心して、電池を入れてスイッチを入れましたがウンともスンとも音が出ません、あれれ、なんで音が出ないんだろう? と思いましたが訳が分かりません、説明書を再度読んで、部品の接続を確認しましたが間違っているところは有りません。 全く解決策が浮かばず困り果ててしまいました。
数日後に電気機器販売店で働いている叔父さんが家に遊びに来ましたので、叔父さんにトランジスタラジオの組み立てキットを買ってハンダ付けもちゃんとしたのに鳴らないんですと言ったら、どれどれと言って組み立てたラジオを見てくれました。 そして、ハンダ付けした時にトランジスタの足をラジオペンチで挟んで熱が本体に伝わらない様にしてハンダ付けしたかい? と聞かれました。 私は、それはしなかったと言ったら叔父さんが、多分それが原因でトランジスタが熱で焼き切れたんだよと言いました。
私はそんなことがあるのか? 取扱説明書にはそんなこと書いてなかった(気づかなかった?)のにと思いましたが、叔父さんが同じトランジスタを買って、今度は熱が伝わらない様にハンダ付けして部品交換すれば直るはずだよと言ってくれました。
そこでまた次の日に、都電の10番に乗って須田町まで行き、トランジスタの2SA-XXXとか言う番号のトランジスタともう一つのトランジスタを2個買いました、いくらしたのかは覚えていませんが多分2個で千円近くしたのではと思います。 そのトランジスタを持って急いで家に帰りました。 そしてトランジスタラジオを出して回路基板を外して、付いていた古いトランジスタをハンダを溶かして外しました。 それから今度は慎重に、新しいトランジスタを取り出して、熱がトランジスタ本体に伝わらない様に足の部分をラジオペンチで挟みながら3本生えている金属の足を丁寧に1本づつハンダ付けしました。
よーし完成だ、震える手で電池を入れてスイッチを入れました。 バリコンチューナーを回すとガガガーピーと言ってからラジオ番組の音が聞こえてきました。 「やったー!」ついに自分用のトランジスタラジオを手に入れたぞと大喜びしました。
それ以来、工作に興味を持って電気溶接機まで買い込んで自宅のガレージで時々工作をするようになってしまいました。
以下二つは余談です。
江戸時代のちいさな話シリーズ は江戸時代のちょっとした話題を書いたサイトで勉強もしておられて参考になるなあと思ったのでご紹介します。
日本初のラジオ放送
日本で初のラジオ放送が始まったのは、1925年(大正14年)のことです。1923年(大正12年)に発生した関東大震災により、無線による放送の必要性を主張する声が高まり、1925年(大正14年)3月22日に東京芝浦の仮放送所から、試験放送が開始されました。
7月までには大阪・名古屋でも放送が開始されましたが、1年後には逓信省の指導によりこれらの放送局が統合されて(社)日本放送協会となり、今のNHKが誕生しました。
現在制定されている「放送記念日」は、東京芝浦からの試験放送が始まった日、3月22日に制定されています。
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