やはり、小学校5年生の夏休みに鹿児島のおじいちゃんの家に行った時の話です。
おじいちゃんの家では蚕(カイコ)を飼っていました。 蚕は食欲が旺盛で毎日桑の葉っぱをシャリシャリと音を立てて食べます。 おじいちゃん達は蚕のことを「けごどん」と呼んでいました。
子供の蚕には桑の葉っぱだけを取って来て食べさせます、大きくなってきたら桑の木から葉っぱのついた枝ごと切り取ってきて食べさせます。
ある日、おじいちゃん達が桑畑に桑の葉を取りに行くときに、僕も連れて行ってもらいました。
子供用に小さな竹で編んだ籠を背負わせてもらい、人差し指に指輪の様なカッターをはめてもらいました。 桑畑についたら、まだ小さい蚕用の葉を集める為に、一枚一枚、葉の根元から指で挟んで切り取って背中の籠に放り込みます。
40分くらい葉っぱをつまんで切り取っては背中の籠に放り込んでいたら、籠が一杯になりました。汗も顔から背中から沢山噴き出していました。 おじいちゃん達と一杯になった籠を担いで家に戻りました。
冷たい麦茶を飲んでから、蚕を飼っている建物に行って桑の葉を蚕たちに食べさせるのです。蚕は建物の天井の梁から垂らされた縄に2段くらいに取り付けられた平らな薄くて丸いザルの様な籠の中にいます。 その蚕たちに公平になるように一枚づつ桑の葉っぱを置いていきます。
一つの籠に平たく葉っぱを敷いたら、次には上の段の籠の中にいる蚕たちにも同じように一枚一枚桑の葉っぱを敷いていきます。 そうして順番に葉っぱを置いて行き、最後の籠の蚕たちに桑の葉っぱを敷き終わると、他の籠の蚕たちは2cm位の大きさしかないのに、葉っぱの上に皆乗っかっていて、シャワシャワと音を立てながら一生懸命葉っぱを食べていました。
そんな風に1週間くらい葉っぱをあげていたら、蚕が育って3cm~4cm位の大きさになっていました。 そこからは桑の木から葉っぱのついた細い枝を植木バサミでパチンパチンと切って、背中の籠に放り込んで、籠が一杯になったら家に戻って、蚕の籠に枝ごと置いていきます。
蚕は凄い食欲でシャワシャワと新鮮な葉っぱを食べています。そして5cm~6cm位の大きさに育つと、繭(まゆ)を作る準備に入り動かなくなります。 その蚕をおじいちゃん達は一匹づつ紙でできた四角い仕切りの中に置いていきます。
その仕切りの中で蚕は口から糸を出して、自分の周りに糸で出来た楕円形の卵の様な丸い壁を作って、その中で蛾になるのを待つのですが、その繭が一杯入った仕切りの状態で絹糸を作る業者に売られることになります。中の蛾の幼虫は絹糸を作るときに繭ごとゆでられてしまうので死んでしまいます。少し可哀そうだと思いました。
でも、ゆでられた繭の中の幼虫は中国では食用に料理されたりします。日本では釣りの餌に使われて渓流のマスやヤマメを釣るときの上等な餌になります。 蚕は無駄な所は何もないんです。
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